*chronicle*

見たものをわたしの言葉で綴りたい。風景描写の練習ブログです。

melancholy

昼過ぎには間接光だけになるこの北東の部屋は、暑い季節の昼間を過ごすには割と快適な場所だ。足元に抜ける風は熱風気味ではあるものの、西陽が差すまでの数時間、木陰のハンモックのようなこのソファで手足を思い切り伸ばして微睡む。それが、猛暑の中で唯一生きていることを実感する時間であると思っていた。

その夏が少しずつ向こう側へ行ってしまう。生きているのか死んでいるのか、そんなことすらわからなくなるほど目の前の熱に浮かされ、思考はおろか呼吸すらままならなくなるほど溺れたあの夏が。木漏れ日の隙間から見上げる陽射はまだ夏のそれだけど、空と風は、あの日から少し彩度を落としたように見える。こうして季節が肌を撫でていく感覚に目を閉じて、わたしはまた溺れるために夏を待ちわびる。

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