miniature garden
まだ新緑の紅葉の葉陰から見上げた陽射は、既に夏のそれを思い起こさせる。灼熱のその身を晒したくて仕方がないかのように、地上のわずかな隙間にもあますことなく降り注ぐ光。そのいたみを和らげるのは、肩口を揺らす風だ。ここは標高が少しだけ高い。
目眩んだはずみでしゃがみこめば、鶏たちが、こちらを気にも留めず庭の片隅に消えていくのが視界の端に写り込んだ気がした。眇めた眸の奥で、視界が大きくゆっくりと回り出す。眩々、眩々と。
「大丈夫か」
遠くで人の声がする。高いとも低いとも、男性とも女性ともわからない、謳うような声。内耳の細胞ひとつまで染み付いて、その声が視界と共に円を描く。すべての感覚は声に支配され、今いる場所さえも瞬間わからなくなってしまう。
意識が遠のいた瞬間、振り子のように視界が突然戻った。木々の合間、鏡面のような水面が風に揺蕩うのが見える。陽炎のように薄れていく白昼夢は、差し出されたてのひらの前に跡形もなく消えた。大丈夫だ。